以下は、Facebookで知り合いがシェアしていた東大名誉教授の石井直方先生のスクワット記事。
石井先生ご自身が筋トレのおかげで術後の回復も早く、病気を乗り越えられたという良いお話でもあるのだけど、
以下は自分メモ用に、スクワットに関する部分のみ転載させていただいた(図も)。
さすが、わかりやすくてありがたい。
東大病院の研究では、大腰筋が太いほど、つまり体幹の筋肉がしっかりしているほど、術後の回復が速いことがわかったという。
病気に罹っていなくても、健康キープにはやはりある程度の筋肉が大切。
◆太ももの筋力は50年間で半分に減ってしまう
ここでは、私がスクワットを推奨する理由をお話ししましょう。
私たちの足腰や体幹の筋肉は、加齢や不活発な生活を続けることによって、どんどん弱ってしまいます。30歳から80歳までの間に、普通に生活しているだけで、太もものサイズと筋力は、およそ半分に減るのです。
しかも、これらの弱りやすい筋肉はすべて、「立つ」「歩く」「座る」といった、ふだんの生活での基本的な動きを支えているものです。これらの筋肉が弱ってしまったら、日常の基本動作さえ、おぼつかなくなります。
◆スクワットは人間の動作の基本中の基本
私がスクワットを皆さんにお勧めする理由が、まさにここにあります。スクワットは、しゃがみ込んで、そこから立ち上がる動作を繰り返します。非常に単純な運動ですが、この動きは、人間の動作の中でも基本中の基本の動きです。
ハイハイしていた赤ちゃんは、まず立ち上がろうとします。歩き出すのは、立つことが前提の運動です。赤ちゃんが立てるようになるというのは、極めて大事な瞬間なのです。高齢になり、足腰が弱ってきてからも、立ち上がるという動きが重要であることは、改めていうまでもありません。
スクワットを行うことで、立ち上がるという基本の動きのトレーニングができることになり、しかも、スクワットは、同時にいろいろな筋肉が使われる点も重要です。
◆鍛えられるのは太ももの筋肉だけではない
スクワットをするとき、主として働く筋肉(主働筋)は、太ももの前側の大腿四頭筋だいたいしとうきんです。この主働筋以外に、同時に多くの筋肉(協働筋)が使われます。
例えば、股関節を伸ばすために、股関節の伸筋(関節を伸ばす筋肉)である大殿筋だいでんきんとハムストリングスを使います。
さらに、体幹を安定させておくのに、脊柱起立筋せきちゅうきりつきんも使います。負荷が強くなると、腹腔ふくくうを締める必要がありますから、複数の腹筋群や、おなかの奥にある深層筋(大腰筋だいようきん)も使う必要があります。
さらに、足の関節を伸ばすためにふくらはぎの筋肉(腓腹筋ひふくきん)、首を固定するために僧帽筋そうぼうきんも働きます。
◆全身運動に近い「エクササイズの王様」
全身の筋肉の約60%は下半身にありますが、スクワットでは、このように下半身だけでなく、全身の多くの筋肉が関わり、複合的に動きます。
言い換えれば、スクワットは、多くの筋肉群を総合的に強化できるきわめて全身運動に近い運動です。
スクワットが「キング・オブ・エクササイズ」と呼ばれる理由はここにあります。
そのうえ、スクワットは種類が豊富です。運動不足を実感している中高年や、足腰が弱りつつある高齢者が、いざ筋トレを始めようとしたときにも、現在の自分の筋力に合わせたやり方でスタートできます。
筋力がある程度ついてきて、トレーニングの強度を上げたい場合も、フォームやスクワットの種類を変えるなどによって、それが可能です。
こうした点から、筋トレ初心者の方にまずいちばんに勧めたいものであり、同時に上級者の要望にも対応できるものが、スクワットといえるでしょう。
◆「8秒スクワット」より上級の「12秒スクワット」
呼吸筋のトレーニングだけに限りませんが、こうしてさまざまな「プレコンディショニング」を行い、筋力・体力を少しでもアップさせておくことが、手術の成功や予後を左右するとされています。
「4秒かけてゆっくりと腰を下ろし、静止なしで、4秒かけてゆっくりと立ち上がる」というスロースクワットも、もちろんメニューに入っていました。
このときは、本書で紹介しているスロースクワットより、少し刺激の強い方法で行いました。
それは、4秒かけて腰を落としたら、そこで4秒キープ(ここが本書で紹介のスクワットよりきつい部分)、次に4秒かけてゆっくり立ち上がるというものです。これを8回×3セット行いました。
スロースクワットを行うのは週に2~3回、合間に体幹や上肢のトレーニングを挟むようにしました。また、以前共同研究も行ったことのある、立派なリハビリ室に赴き、エアロバイクこぎなども行いました。
◆筋トレは回数にこだわらなくていい
◆たった1回でも効果があり、着実に強くなる
イスから、ゆっくりと立ち上がり、また、ゆっくりと腰を下ろす(足腰の弱っている方は、転倒防止のためにどこかに手をついて行ってください)。
体力のない方なら、これをたった1回行うだけでもいいのです。立ち上がる動作と腰を下ろす動作をできるだけゆっくりと行えば、これも立派なスロースクワットになります。
運動の強度や回数は、自分の体と相談しながら、少しずつ増やしていきましょう。
「これは無理だ」と思ったら、やめていいのです。「もうちょっとできそうだな」と思ったら、もう少しがんばってみてください。
これまで運動してこなかった方なら、たった1回のスクワットを行うだけでも、きっと効果があるでしょう。
それを続けていくことができれば、行うスクワットの回数も1回が2回になり、2回が3回となって、しだいに増やしていくことができます。少しずつ回数が増すにつれて、筋肉も着実に強くなっていきます。
◆「強くなった」と自覚した時こそ要注意
ただ、そうやって運動を続けていった結果、筋肉が少しずつ強くなってきたときも、決して過信しないことが大切です。
というのも、筋肉は鍛え始めると、思った以上に早めに効果が現れてくることがあります。筋肉強化を実感し、びっくりするくらい以前と違ってきたと感じる瞬間が訪れることも……。そんなときこそ注意が必要です。
そうしたケースでは、一部の筋肉が確かに強化されてきてはいます。しかし、じつは、体全体がその変化についていけていないというケースが往々にしてあるからです。
運動経験のほとんどなかった方には、こうした体の強化のアンバランスが起こりがちで、そういう人が調子に乗って運動を過度に行ってしまうと、転倒してケガをするといった事故が起こりやすくなります。
↓こちらが全文。