1、うつなどの精神疾患も菌で改善
・過敏性腸症候群(IBS)について
・大うつ病性障害(MDD)や双極性障害について
2、認知症の原因は腸内環境にあった!
・認知症の原因
・腸内環境と認知症の関係
・腸内細菌と認知症
・腸内細菌叢関連代謝物と認知症
・炎症性腸疾患(IBD)と認知症
・まとめ
3、アルツハイマーも”腸の炎症”が原因?
・「アミロイドβの蓄積=アルツハイマー」はもう古い?
・アルツハイマーの原因は腸の炎症!?
4、腸の情報は肝臓を介して脳へ伝わる
・迷走神経を介した腸管免疫のコントロール
・脳腸“肝”相関?
5、過敏性腸症候群(IBS)と腸内細菌の関係のこと
・IBSに特有の腸内細菌とは
・海外での結果も
・プロバイオティクスによる治療は
・抗菌薬、糞便移植による治療効果は
・おまけ/IBS体験記
6、ここまで分かった『長寿の源は腸内環境』
気づかぬうちに腸から異物が全身に!
『発達障害』『うつ』『アレルギー』の真因
『腸漏れ』を防ぐ術」より
・ASD発症の原因は腸内細菌のバランスの崩れ?
・誰にでも起こる現象
・腸とASDの関係
・ASDが発症する二つの条件
・腸内細菌を移植すると
・腸の状態を知るには
・食物繊維と発酵食品
・炎症を促進する食品は?
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1、うつなどの精神疾患も菌で改善
IBS(過敏性腸症候群)や軽度なうつ症状などで悩んでいる方は多いと思いますが、腸内細菌と精神疾患との関連についてわかりやすい話があります。
「腸は第二の脳」と言われていますが、脳と腸の間には密接な関係(腸脳相関)があることは以前から知られていています。
怒りのホルモンであるノルアドレナリンが放出するなど、生体からの刺激によって腸内細菌の毒性や数が変化すると、これが体の症状に影響を与えたり、病気を生じさせる一因になると考えられています。
■過敏性腸症候群(IBS)について
ガセリ菌がIBSに効くと以前から話題ですが、その理由は?
IBSには、プラセボ群と比べてもガセリ菌23(L.gasseriCP2305)投与群が優位に改善効果があるそう。
またガセリ菌23は腸内フローラの改善に加えて、IBS患者に見られる翻訳開始因子(タンパク質合成の翻訳過程を開始させるタンパク質群)の発現低下を回復させるため、IBSが改善することもわかりました。
さらにこの菌、同菌の死菌を用いた研究でも、睡眠障害や睡眠の質が優位に改善します。
生で摂らないと効かないわけではなく、サプリでも効きます。
■大うつ病性障害(MDD)や双極性障害について
大ウツ病性障害は、同じ乳酸菌の中でもビフィドバクテリウムが優位に少なく、ラクトバチルスが少ない傾向にあります。
双極性障害は同じくビフィドバクテリウム、ラクトバチルスはいわゆる健康人との差は認められないそうです。
でもビフィドバクテリウムと血中コルチゾール濃度(過度なストレスを受けると分泌量が増加)が優位な負の相関を示すため、ビフィドバクテリウムはストレス反応に重要な役割を果たすことがわかりました。
(参照 Medeical Tribune(2019,2,21))
つまり。
ビフィドバクテリウムの摂取により、双極性障害の改善が期待できるということなのでしょうか?
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2、認知症の原因は腸内環境にあった!
認知症の原因は生活習慣や栄養素の欠乏など様々挙げられますが、近年、腸内環境(腸内細菌)が認知症に関連しているという研究が報告されています。
(株式会社ヘルシーパスの「Nutrients for preventive medicine」より)
■認知症の原因
認知症には
・アルツハイマー型認知症(AD)
・レビー小体型認知症(DLB)
・前頭側頭型認知症(FTD)
・血管性認知症(VD)
などの種類があり、原因が異なります。
AD、DLB、FTDは脳の神経細胞がゆっくりと死んでいく変性疾患で、VDは脳梗塞、脳出血などで神経細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり、その部分の神経細胞が死んだり、神経のネットワークが壊れてしまうことで起こります。
また感染症や脳腫瘍、外傷、髄液循環障害、甲状腺機能低下、アルコール中毒、ビタミン欠乏などによっても認知症になることがあります。
最近では、歯科疾患や腸内環境と認知症との関連性も指摘されています。
■腸内環境と認知症の関係
ヒトの腸内には約100兆個の腸内細菌が棲んでおり、体調や健康状態と密接な関わりがあると考えられています。そして腸内環境と脳機能は神経系やホルモンなどを介して影響を与え合っていると言われ、腸内環境と認知症の関係を探る様々な研究が行われています。
以下、腸内環境や腸内細菌と認知症に関する研究を3報ご紹介します。
●腸内細菌と認知症
もの忘れ外来を受診した128名に対して認知機能検査や頭部MRI検査を実施し、検便サンプルの腸内細菌組成を調査して認知機能との関係を解析した。
認知症の人の腸内細菌はBacteroides(エンテロタイプ I)と呼ばれる菌が少なく、約15%しか検出されなかったのに対し、認知症でない人からは約45%も検出された。
さらにBacteroidesが多い人と、そうでない人を比べると認知症になる確率が約10分の1となっていることがわかった。
(Naoki Saji et al., Sci Rep. 2019 Jan 30;9(1): 1008.)
※エンテロタイプ:ヒト腸内共生細菌叢のパターン
●腸内細菌叢関連代謝物と認知症
平均年齢74.4歳の被験者107名の腸内細菌をT-RFLP法を使用して解析し、糞便中代謝物の濃度を測定したところ、認知症グループは認知症ではないグループよりもエンテロタイプI微生物が少なく、エンテロタイプⅢ微生物の割合が多かった。
また代謝産物ではアンモニア、フェノール、p-クレゾールは認知症グループで有意に高く、認知症に寄与した代謝産物を特定する単変量分析では、糞便のアンモニア濃度が最高で認知症リスクが1.60倍、糞便の乳酸濃度が最低で認知症リスクが0.28倍だった。
糞便中のアンモニア濃度は認知症と相関して乳酸濃度は逆相関し、エンテロタイプよりも認知症と強い関連性を示した。
( Naoki Saji et al.,Sci Rep.2020 May18;10(1):8088.)
●炎症性腸疾患(IBD)と認知症
台湾の国民健康保険研究データベースを用いて、IBD診断後の認知症リスクを評価するために、45歳以上のIBD 患者1,742名とコントロール群17,420 名の比較分析を行った。
IBD患者の認知症全体の発生率は有意に上昇し、IBD患者の認知症発症リスクは約2.5倍だった。またIBD 患者では平均年齢76.24歳で認知症と診断されたのに対し、コントロール群では平均年齢83.45歳で認知症と診断された。
認知症タイプの中では、アルツハイマー型認知症の発症リスクが最大で、認知症リスクは性差間でも、潰瘍性大腸炎とクローン病の間でも違いがなかった。
(Bing Zhang et al., Gut. 2021 Jan;70(1):85-91.)
■ まとめ
「Bacteroides」は菌の種類、株が多数あり、それぞれ腸内で作る代謝物や特徴が異なるため、Bacteroidesさえ多ければ良いとは言えません。
また軽度認知障害患者に Bifidobacterium(B.breve A1)を16週間摂取させたところ、記憶機能が向上したという報告もあります。
(J Alzheimers Dis.2020;77(1):139-147.)
腸内細菌叢は食事内容で大きく変化し、特にオリゴ糖や水溶性食物繊維のようなプレバイオティクスの摂取はBacteroidesやBifidobacteriumの増殖に重要です。
普段の食事において腸内環境を良くする食材を取り入れることで認知症対策ができる可能性があります。
【参考 】
国立研究開発法人国立長寿医療研究センターもの忘れセンター「認知症はじめの一歩」、厚生労働省サイト、ヘルシーパスNL No7297「歯科疾患と認知症の関係」、細野 朗 腸内細菌学雑誌 27 巻 4 号(2013) 203~209
(以上)
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3、アルツハイマーも”腸の炎症”が原因?
これは臨床分子栄養医学研究会の宮澤賢史先生のお話の要約です。
■「アミロイドβの蓄積=アルツハイマー」はもう古い?
アルツハイマー型認知症(以下、アルツハイマー)というと。
認知機能の低下と人格の変化を症状とする認知症の一種であり、脳の萎縮を伴います。
アルツハイマーは脳の変性が徐々に進行するため、症状も徐々に進行するというのが特徴です。
最終的には寝たきりになって、死に至るということです。
症状経過の途中で、被害妄想や幻覚、暴力、徘徊などを伴うケースが多く、患者本人だけではなく、周囲の人のメンタルにも大きな影響を及ぼすことも問題になっています。
このアルツハイマーの原因は、アミロイドβの蓄積が原因とされてきました。
■アルツハイマーの原因は腸の炎症!?
ところが最近では、真の原因が
1、炎症
2、栄養の欠乏
3、毒物
これらにあることがわかってきたのです。
脳がこれらの脅威に晒されると、そこから身を守るためにアミロイドβを増やすということがわかったのです。
まずは1の炎症について。
アルツハイマー発症を防ぐために最も気をつけるべきことは、実は腸の炎症を抑えること。
腸に炎症を起こすものは主に病原菌、砂糖、グルテン、カゼイン、トランス脂肪酸といったリーキーガットを誘発する食材です。
また、内臓脂肪にも注意が必要です。
脂肪細胞は、サイズが小さいときには、アディポネクチンやレプチンといった痩せる物質が分泌されますが、サイズが大きくなると炎症性物質であるTNFαが分泌されるのです。
これは、インスリン抵抗性を惹起する物質でもあります。
インスリンを排泄する物質とアミロイドβを排泄する物質が同じなので、その結果として脳にアミロイドβの蓄積が促進されてしまうということ。
他にも、口腔や喉、胃、肝臓の炎症も関連するそうです。
次回は「栄養の欠乏」「毒物」についても書いていきます。
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4、腸の情報は肝臓を介して脳へ伝わる
(2021年4月5日付け 日経メディカルより・執筆/今滿 仁美)
以下は「日経メディカル」に掲載されていた記事で、一部転載させていただきます。
腸の恒常性維持に脳が重要な役割を果たしていることは広く知られているが、脳はどのように腸内細菌を含む腸管環境の変化を検知し、その変化に応じて腸管環境をコントロールしているのだろうか。
この謎を解明したのが、慶應義塾大学医学部内科学教室教授の金井隆典氏らのグループだ。
同グループは、腸管内の情報が血流によって肝臓に伝えられ、肝臓で集積・統合された後、迷走神経を介して脳に伝えられることを明らかにし、昨年6月、Nature誌で報告した。
さらに、脳はこの情報に基づき腸管の状況に合わせて、迷走神経反射によって、腸管免疫が過剰に活性化しないようコントロールしているという(Teratani T, et al. Nature.2020;585:591-6. )。
■迷走神経を介した腸管免疫のコントロール
腸管内は腸内細菌や食餌抗原などの異物に絶えず曝されているが、過度な炎症反応が起きないように維持されている。
これを可能にしているのが、腸管に存在する末梢性制御性T細胞(pTreg)の存在だ。
制御性T細胞はT細胞の一種で、異物を排除する方向に働く他のT細胞とは逆に、自己に対する免疫応答を抑制する作用を持つとされている。
これまで、腸管の過剰な炎症の制御に関わる腸管pTregの分化・維持には、特定の腸内細菌やサイトカインなどが重要だと考えられてきた。
一方、自律神経の関与が指摘されるうつ病や過敏性腸症候群の患者が炎症性腸疾患を発症する頻度が比較的高いことから、自律神経が腸管免疫に影響を及ぼす可能性が示唆されている。
しかし、これら腸管pTregと神経系との関連は長らく不明のままだった。
同グループは、マウスを用いた実験により、腸管pTregの分化・維持に重要とされる抗原提示細胞(APC)が腸管粘膜固有層内の神経の近傍に多く存在すること、腸管APCでは脾臓APCとは異なり、ムスカリン型アセチルコリン受容体サブタイプ1(mAChR1)が強く発現していることを見出した。
さらに培養皿上で、マウス腸管由来APCをムスカリンで刺激すると、pTregの誘導に関わるレチノイン酸代謝遺伝子の発現が亢進した。
このムスカリンによるレチノイン酸代謝遺伝子の発現亢進は、ヒトの腸管由来APCにおいても同様に見られた。
この結果によって神経伝達物質を介した腸管pTregの分化誘導が示唆されたため、次にマウスの迷走神経本幹を外科的に遮断したところ、腸管pTregが著しく減少することを確認した。
さらに腸炎モデルマウスにおいて迷走神経を遮断すると、病態が増悪することが分かった。
腸管と脳を結ぶ神経回路を詳しく探索した結果、左迷走神経を構成する迷走神経肝臓枝求心路を介して脳幹の左延髄孤束核に刺激が伝わり、左迷走神経背側運動核、左迷走神経遠心路を介して腸管神経が興奮するという迷走神経反射が、腸管pTregの分化・維持に重要であることが明らかになった。
つまり、「腸→肝臓→脳→腸」という迷走神経反射を経て、神経伝達物質であるアセチルコリンが腸管APCに受容され、腸管APCのレチノイン酸産生能が亢進することで、腸管pTregの分化・維持を誘導し、腸管免疫の過剰な活性化を抑制するというわけだ(図1)。
↓図1 迷走神経を介した腸管pTregの維持機構(提供:金井氏)
■脳腸“肝”相関?
では、脳と腸とのやり取りに肝臓が関与する意義はいったい何なのだろうか。
金井氏によると、肝臓には腸管内の情報を集積・統合して脳に伝える“インフォメーションセンター”としての役割があるという。
「腸管内の情報は、腸内細菌に関わることだけでなく、栄養状態やpH、酸素濃度など多岐にわたる。このような膨大な情報を、全長8mにも及ぶ腸管の局所と脳が1対1でやり取りしていては混乱が生じてしまう。そこで、門脈を介して、腸管内の情報を肝臓に一度集積し、平均化した上で脳に伝える方法を取っているのではないか」と金井氏は推測する。
今回、脳が腸管免疫をコントロールする機構が明らかとなったことで、潰瘍性大腸炎やクローン病など、過剰な免疫応答により腸管の炎症を来す疾患の新たな治療法開発が期待される。
金井氏は「腸管免疫を抑制できると考えられるムスカリン型アセチルコリン受容体に対する作動薬については、すでに開発が進んでいるため、それらを応用できる可能性がある」としている。
一方で、「受容体の結合特異性の問題や副作用といった課題もあるため、今後より詳細な研究を進め、新たな治療法を模索していきたい」と金井氏は展望を語った。
(以上)
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5、過敏性腸症候群(IBS)と腸内細菌の関係のこと
日本人の約2.2%の方が過敏性腸症候群(IBS)にかかったことがあるそうだ(世界人口だと4.1%)。
そして「日本医師会雑誌 第149巻 第9号」(2020年12月号)内での東北大学大学院医学系研究科行動医学 教授 福土 審(ふくど・しん)先生の記事「腸内細菌と過敏性腸症候群」によると、このIBSを生じさせる原因はある特定の腸内細菌にあるということがわかった。
■福土教授の分析によると…
IBS患者の腸内細菌を分析したところ、健常者よりもラクトバチルス属とベイロネラ属が多い。
ラクトバチルス属はグルコースを乳酸に代謝する。
ベイロネラ属は乳酸を酢酸、プロピオン酸に転換する。
そこで糞便中のこれらの腸内細菌産物である短鎖脂肪酸を調べた。
IBS患者ではSCFA総計ならびに酢酸、プロピオン酸の濃度が健常者よりも高かった。
また酢酸、プロピオン酸量が高いほどIBS症状が重症化し、QOLと失感情症の外的思考も悪化した。
失感情症はIBSならびに自閉症スペクトラム障害に関連、併存する心理機制である。
こうして腸内細菌の変化が酢酸、プロピオン酸の恒常性を超えた増加を介してIBSの源流となることが示唆された。
■海外での結果も…
またIBSの腸内細菌については海外でも解析されていて、2631件もの研究結果が報告されているが、その中でも信頼性が高い研究結果を見ると、健常者よりもIBS患者で増加している腸内細菌はエンテロバクテリアシー科、ラクトバシラス科(乳酸桿菌科)、バクテロイデス属であった。
反対に健常者よりもIBS患者で減少している腸内細菌は、フィーカリバクテリウム属、ビフィドバクテリウム属であった。
これらの腸内細菌の増減は、下部消化管粘膜の微小炎症、粘膜透過性、細菌の毒素産生や粘膜保護作用を持つと考えられる酪酸産生に関係すると考察されている。
■プロバイオティクスによる治療は…
そしてIBSの腸内細菌に働きかける代表的な治療法はプロバイオティクスであるといわれる。
IBS患者を対象にしたプラセボ対プロバイオティクスの無作為化比較臨床試験の結果、プラセボ投与群ならびにラクトバシラス投与群では腹部症状は改善しなかったという。
一方でビフィドバクテリウム インファンティス投与群では腹部症状が改善したという。
さらにプロバイオティクスを用いて腸内細菌を変容させると、脳腸相関を介して脳機能(抑うつ尺度)を改善させうることなども示唆されている
■抗菌薬、糞便移植による治療効果は…
このほか抗菌薬もIBSの原因菌を除菌あるいは減菌することを期待して投与されている。非吸収性経口抗生物質のリファキシミンは腸内細菌異常増殖を改善しうることがわかった。
また糞便移植の試みなどもなされているが、感染症の危険性や長期観察での効果減弱などの問題点が改善されていないという。
■おまけ/IBS体験記
ところで。
IBSといえば私も30代前半、通勤途中の電車の中でトイレに駆け込みたくなったり、何か食べるとすぐに出てしまったり…などで悩んでいた時期があった。
当時、職場でいじめにあっていた。
ただいじめられる理由もだいたいはわかっていたので割り切って「仕方ない」くらいに思ってはいたものの、それでも身体は正直だった。
思考と身体は別物なのだ。
その後症状があまりにも酷くなってしまったために、いよいよ内科で腸の内視鏡検査を受けることになった。
結果は、、、
全く異常なし。
担当医からは「綺麗な腸壁」と褒められた。
その時IBSの理由を尋ねても、ストレスという返事だけであとはわからなかった。
でもその検査を受けてから私のIBS症状はピタリと止んだ。
きっかけは、その時に処方されたコロネルというお通じをかためる薬を飲んだこと。
なんと一回飲んだだけで腸の動きが静かになり、それまでの辛かった腸の記憶がすべて消えたかのように症状が収まってしまったのだ。
そこからあっけなく回復した。ウソのようだった。
(もちろん治り方には個人差があります)
当時は福土教授のお話にあるようなプロバイオティクスの服用もしていなかったし(効かないと思い込んでいた)、メンタル系の薬も飲んでいなかった。
でもコロネルを飲んで過剰な蠕動運動が収まり腸内細菌が整い出し、検査結果が異常なしともわかり、安心感に包まれて身体が変わっていったのかもしれない。
同じIBSでもこんな例もあるという意味で書いてみました。
(以上)
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6、ここまで分かった『長寿の源は腸内環境』
気づかぬうちに腸から異物が全身に!
『発達障害』『うつ』『アレルギー』の真因
『腸漏れ』を防ぐ術」より
以前こちらにも投稿したリーキーガット症候群について、デイリー新潮が大変わかりやすい記事を掲載されていました。
以下、「デイリー新潮」より全文転載(週刊新潮 2022年1月20日号掲載)。
↓
リーキーガット? 聞きなれない言葉だが、「腸漏れ」と訳され、腸の細胞の間隔が緩み、異物が血管内に漏れ出す状態のこと。誰にでも起こりうる症状でそれが多様な病気の原因になっているという。どうすればその「万病の元」に気づき、防ぐことができるのか。【生田 哲/薬学者、評論家】
〈うちの4歳の長男が自閉症のようで、親からの呼びかけにほとんど反応せず、自分の世界に閉じこもっている。他の子たちと遊びたがらない。笑わない。他の人と目を合わせないし、触られるのも嫌がる――〉
あなたのまわりにもこのように悩む親御さんがいないだろうか。発達障害の代表ともいえるASD(自閉スペクトラム障害)の症状である。近年、日本を含めた先進諸国でこうした子供が激増しているのだ。
文部科学省によると、ASDの発症者は、調査をとり始めた2006年は3912人、16年は1万5876人、そして19年は2万5635人となっている。日本でも13年間におよそ6.5倍にも膨れ上がっているのだ。
ASDは1943年にアメリカの精神科医レオ・カナーによって発見されて以来、精力的に研究されてきた。にもかかわらず、社会性の欠如、同じ動作をくり返すといったASDの特徴的な症状を治療する薬として承認されたものは、いまだ一つもない。
■ASD発症の原因は腸内細菌のバランスの崩れ?
だが、ここにきて一縷の希望が生まれている。ASDの治療法の開発において、腸内細菌の活用が、非常に有望視されているのだ。
脳内に原因があるであろうASDは、腸とは無関係であるかのように思える。ところが、近年、ASD発症の原因は、腸内細菌のバランスの崩れによるリーキーガット(Leaky gut、腸漏れ)であるとする仮説が提出され、しかも、この仮説を強く支持する動物実験や臨床試験の結果が次々に報告されているのだ。
詳しくは拙著『心と体を健康にする腸内細菌と脳の真実』を読んでいただきたいが、ここではリーキーガットとは何かを簡単に説明し、注目されている治療法を解説していきたいと思う。
リーキーガット? 怪しげな横文字と思われるかもしれないが、リーキーガットは、今では科学・医学の世界における一流雑誌でもしばしば登場している。一言で言えば、腸の状態が非常に悪いことを指す言葉である。
以下、専門的な話になるが、お付き合いいただきたい。
食物は歯で噛まれ、胃に蓄えられ小腸で消化・吸収される。タンパク質はアミノ酸に、脂肪は脂肪酸とグリセリンに、デンプンはブドウ糖に、要するに小さな分子に分解され、小腸粘膜から吸収される。吸収された栄養素は血液によって全身を回り、脳と体の組織で使われる。
小腸粘膜は細胞と細胞が密に並んでできていて、細胞と細胞のつながりはタイトジャンクション(TJ)と呼ばれている。もしTJがゆるくなって隙間ができると、本来は通過できないはずのタンパク質、多糖類、細菌、ウイルス、未消化物などの大きな分子がその隙間を通過してしまう。これが「リーキーガット」という状態である(図1)。
■誰にでも起こる現象
TJがゆるくなるのは、腸内細菌の種類や総数が著しく減少したり、腸内で炎症が起きたりして腸内環境が著しく悪化することが主な原因であることがわかっている。
小腸粘膜では古い細胞が抜け落ち、新しく誕生した細胞がそれと入れ替わる。この高速新陳代謝を助けているのが腸内細菌だ。もし腸内細菌の種類や総数が減少すると、小腸粘膜をつくる新しい細胞の誕生が、細胞が抜け落ちていくスピードに追いつかなくなる。
このため小腸粘膜が極端に弱くなり、TJがゆるくなるのだ。腸内で悪玉菌が増えて、善玉菌が減っても、同じことが起きる。このようにリーキーガットは稀なことではなく、誰にでも起こりうる。
リーキーガットになると小腸粘膜細胞の隙間から異物が体内に入ってくる。この異物を破壊するために、免疫系が放った活性酸素が逆に腸を傷つけ炎症を起こす。炎症が局所にとどまることもあれば、全身に広がることもある。
こうしてアレルギーや、稀に、それより重症なアナフィラキシーが引き起こされる。これを「リーキーガット症候群」と呼ぶ。
腸に炎症が起きた結果、便秘、腹痛、下痢、発熱の他、皮膚では発赤や腫れ、湿疹、痒みが現れ、精神的にも不安、うつ、イライラするなど、多様な症状を示す。リーキーガットは万病の源であり、ASDもそのひとつなのである。
■腸とASDの関係
しかし、なぜ腸で起きていることが、ASDにつながるのだろうか。
過去20年以上にわたる研究から、ASDの人の腸内環境は、ASDでない人のそれと著しく異なることが明らかになっている。
一言で言えば、ASDの人の便中には、悪玉菌が健常者に比べて異常に多く、ビフィズス菌などの善玉菌が減少している。腸内細菌とASD発症には密接なつながりがあるのだ。
では、どんなつながりか。両者を結ぶ五つの重要な発見があった。
最初の発見は、ジョンズ・ホプキンス大学のビルミザー教授のグループが2004年に発表したもので、亡くなったASDの人の脳を調べたところ、脳内で炎症が発生していた(発見1)。
発見2は、カリフォルニア工科大学のパターソン教授のグループが05年に発表したもので、「母体免疫活性化」と呼ばれるものだ。
ビルミザー教授のグループとカリフォルニア工科大学のグループによって証明されたのは、妊娠中の女性がウイルスや細菌に感染することによって、母体の免疫系が活性化し、その結果、生まれてくる子のASD発症リスクが高まることだ。
脳の発達を妨げるのは、母体免疫活性化の際に増加するIL6(インターロイキン6)という物質(発見3)だ。これはリーキーガットによる炎症で引き起こされる物質でもある。
さらに18年、アメリカの精神科病院マクリーン病院の科学者は、マウスの実験で、誕生後に、子マウスの免疫系が活性化した場合でもASD様の症状を示すことを発表した(発見4)。
もし赤ちゃんが誕生した後でも免疫系が活性化してASD様の症状を引き起こすのなら、母体以外の何かがその引き金になっているはずである。母体以外の何かとは、食べ物、食品添加物、薬、農薬、毒物や重金属などの環境汚染物質、ストレスなどで、あらゆる有害因子がASDの引き金となり得ると考えられている。
つまり、これらの発見によって以下のことがいえる――。IL6が生じるのは、妊婦の感染によって免疫系が活性化して生じた炎症によるものと、有害因子が幼児をリーキーガットにさせ、幼児の腸に発生した炎症によるものがある。このIL6が脳に移動することで、胎児や幼児の脳の発達が妨げられ、ASDが発症する、と考えられる。
子どもイメージ
「自閉スペクトラム障害」の真犯人とは(他の写真を見る)
■ASDが発症する二つの条件
ここで疑問が生じる。脳は、「血液―脳関門」という関所によって守られているはずである。通常、この関所があるため、IL6のような有害物質は脳に侵入できない。だが、この関所がゆるくなっていれば、有害物質が通過し、脳に侵入することも可能だ。ASDの人の脳ではどうなっているのか?
ハーバード大学のファザーノ教授のグループが、亡くなったASD患者の脳と亡くなった健常者の脳を調べたところ、ASD患者の血液―脳関門では炎症が起こり、組織が損傷し、漏れやすくなっていた(発見5)。
「腸が漏れるリーキーガット」と「脳が漏れるリーキーブレイン」という二つの条件が満たされることで、ASDが発症するのだ。
腸漏れと脳漏れは別個の事象ではあるが、どちらもストレスによって放出されるノルアドレナリンによって炎症が増幅され、漏れやすくなる。
しかも幼児では、この関門が発達途上にあるため、完全に閉じているわけではないから、有害因子の侵入に対して脆弱なのだ。関門が完成した大人でも慢性的にストレスを受ける、あるいは、100dB程度の音楽や拡声器の大音量にさらされるなどによって、この関門がゆるくなることが確認されている。
ここまでをまとめると、荒れた腸内環境がASDを発症させる原因のひとつであることがわかる。そうであるならば、健康な人の腸内細菌をASDの子供に移植すれば、症状は改善するのではないか。
■腸内細菌を移植すると
17年に発表された、アリゾナ州立大学による腸内細菌移植の臨床研究を紹介しよう。被験者として7歳から16歳までのASDの子供18人が集められた。被験者全員が慢性の下痢、腹痛、便秘といった腸の障害を持つ。この被験者にMTT(腸内微生物移植)を受けてもらった。
腸内に存在する細菌を2週間かけて取り除いた後、健康な人から採取した腸内細菌を被験者に移植したのだ。腸内細菌の移植は、ある子供は浣腸によって、また、ある子供は高濃度細菌を含んだ微生物ドリンクを飲んでもらった(どちらも同じく有効)。全体で18週間に及ぶ臨床試験である。結果は驚異的なものだった。
被験者18人中、16人は腸の症状が80%も改善したのだ。と同時に、ASDの症状も著しく改善していた。関係者でさえ予測できなかった素晴らしい結果であった。だが、それが長続きするのか。2年後の追跡調査では、結果はこうなった。改善した16人のASD症状は、2年後でも58%の改善状態を維持していた。
データのひとつを紹介しよう(図2)。
では、2年後のASD症状はどうだったか。臨床試験開始時には、83%が「重度」であったが、2年後には「重度」17%、「軽度/中程度」39%、「ベースライン以下」44%に改善した。2年後の子供たちのASD症状は臨床試験開始時にくらべ、大幅に改善したことが明らかとなった。
アリゾナ州立大学のグループによるMTTの結果はすばらしいが、研究はまだ始まったばかりであり、MTTがクリニックで治療に用いられるわけではない。FDA(米食品医薬品局)で認可されるには、より多くの患者を対象に有効性と安全性を調べる試験が求められる。現在、できるだけ迅速にFDAから承認を得、実用化するために、米フィンチ製薬は、ASDの子供を対象に第2相臨床試験の準備を進めている。
一方、日本の取り組みは遅れていて、民間団体の腸内フローラ移植臨床研究会と提携している医療機関が、17年から腸内細菌の移植によるASDの治療を開始したが、大学病院レベルでは、筆者の知る限り、まだ行われていない。
■腸の状態を知るには
腸は便秘、下痢、腹痛、アレルギーから脳の病にいたるまで、あらゆる病気に関係する。腸は人の健康の源であるから、その状態を知ることは重要である。しかも腸の状態の自己チェックは、簡単にできる。便秘、下痢、腹痛があれば、腸が不健康な状態なのである。
このとき、腸内では、悪玉菌が増加し、ビフィズス菌などの善玉菌が減少しているため、小腸粘膜の再生が間に合わず、すでにリーキーガットが発生しているか、発生寸前の状態なのである。
善玉菌が減るのは、好物の水溶性食物繊維が不足するからであり、悪玉菌が増えるのは、好物の糖質(甘いもの)が大量に供給されるからである。
腸が健康を失えば、人は健康ではいられない。その腸の不健康の代表がリーキーガットなのだ。
私たちが健康に生きるには、腸を健康に保ち、リーキーガットを防ぐことが肝心なのである。それには、腸内に住む細菌たちを大切に育てることだ。
まずは心構えだ。お腹の中に細菌というペットを飼っていると思えばいい。ペットのエサは私たちが口にする食べ物である。ペットの健康を守るために、私たちは毎日の食事に気を配らなければならない。それが、やがて私たちの健康という形で跳ね返ってくる。
では、どうすればいいのか。次に具体策である。
■食物繊維と発酵食品
腸内細菌のエサで最も優れているのは食物繊維である。とりわけペクチンに代表される水溶性食物繊維は、善玉菌の大好物だ。ペクチンは、オートムギ、ニンジン、パプリカ、キャベツ、果物(とくにリンゴ)などに大量に含まれている。
腸内環境を整え、腸内細菌を増やす強力な助っ人が、味噌、醤油、納豆、ザワークラウト、ピクルスなど。増えた善玉菌が腸内環境を改善するだけでなく、それらの食品に含まれる栄養素も腸を強くする。発酵食品を、毎日食べよう。チーズやヨーグルトもよいだろう。
基本的に食事は食物繊維の多い野菜を中心とし、砂糖の多い食品や加工食品を避け、肉類や魚介類を適度に摂取することが重要だ。
ストレスは交感神経を優位にさせ、ノルアドレナリンを過剰に放出させ、腸の炎症を悪化させる。結果、脳漏れや腸漏れを起こす。
これを防ぐために、EPAやDHAなどのオメガ3系と呼ばれる脂肪酸を積極的に摂取したい。オメガ3系は炎症を抑えることで腸を守るからだ。EPAやDHAは青魚に、それ以外のオメガ3系(α-リノレン酸)はアマニ油、エゴマ油、シソ油に多く含まれる。
■炎症を促進する食品は?
反対に炎症を促進するのが、コーン油、ダイズ油、ベニバナ油、ヒマワリ油などで、その主成分はリノール酸というオメガ6系だ。腸を炎症から守るポイントは、オメガ6系の摂取をできるだけ減らし、オメガ3系を積極的に摂ることである。
オメガ6系を避けるという意味では、炎症を起こさないオリーブ油やアボカド油などのオメガ9系を摂るのもよい。
日本でも小さいながら動きがある。教育研究家の七田厚氏が主宰する「しちだ・教育研究所」の取り組みだ。ASDの子供たちの腸内細菌を育むために食物繊維やオメガ3系を積極的に摂取させることで、子供たちの行動に改善が見られたとの報告が21年に寄せられた。
ASDに代表される発達障害児の行動や症状の改善を得るために、是非とも腸内環境を改善する食事を採用したいものである。
生田 哲(いくたさとし)
薬学者・評論家。1955年、北海道生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)などの博士研究員を経て、イリノイ工科大学助教授(化学科)。現在は日本で、生化学、医学、薬学、教育を中心とする執筆活動と講演活動、脳と栄養に関する研究とコンサルティング活動を行う。